2020年は世界中がコロナの話題一色になっており、沈静化しても第二波到来といった感じでなかなかコロナ禍から抜け出すことができなくなっているのが現状です。一時期は「アフターコロナ」という言葉をよく目にしましたが、現状を鑑みると「ウィズコロナ」(コロナとの共生)が現実的です。そんな中で生存を高める治療薬やワクチン開発についての朗報が届けられ、市場はややリスクオンに傾いてきました。FXトレーダーにとって、そこで不思議に思うことが、「なぜリスクオンになっているのにドル安が続いているのか」ということです。今回はリスクオンでのドル安に注目してみました。
リスクオンとリスクオフ
リスクオン・リスクオフ
「リスクオン」とは投資家がリスクをとってでもリターンを追求しやすい相場の状況です。景気が良好になったり、金融緩和によって株式などに投資家の資金が向かいます。当然株価は上昇していくわけです。
「リスクオフ」はその逆ですから、リスクを回避するため投資家の資金はより安全な資産へと向かいます。米国債などに人気が集まるわけです。リスクの高い株式を売って国債を買うわけですから当然株価は下落します。
日米の株価と通貨価格の関係性
一般的にはその国の株式が上昇すれば、景気が良くなっていることを示しているので、通貨価格も上昇します。常に連動するわけではありませんが、ダウが上昇していけば、ドル高基調になるということです。景気が良くなれば利上げも行われ金利も上がるので通貨価格が上昇するのは自然な流れです。
日本の場合は例外で、リスクオンとなると円を売って日本株を買うので日経株価は上昇するものの、円安になる傾向があります。逆にリスクオフになると日本株を売って、円を買うので円高になるわけです。つまり日経株価は下落するが、円高になります。ひと昔前までは「有事のドル買い」といってリスクオフになるとドルを買う動きが盛んになりましたが、テロが目立つようになってからは「有事の円買い」にシフトしていっています。
これまでのFXのパターンだと、リスクオンになればドル買い、リスクオフになればドル売りということでした。
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なぜリスクオンでドルが売られ、ユーロが買われるのか?
コロナによるドル買いの加速
2020年1月の頃はダウは29,000ドルを突破、1ドル110円台だったよね。ここからコロナが世界中で問題となって、リスクオフが強まってダウは20,000ドルを割り込み、ドル円も1ドル101円台まで急落したよね
それが3月の話だね。ただ、ドルの変動とダウの変動のタイミングは少し違うんだ。3月27日クローズの段階でダウは19,173.98ドルだったのに対して、ドル円は1ドル110.82円まで急騰しているよ
じゃあ、昔のようにリスクオフでの「有事のドル買い」が復活したんだね
そうだね。このタイミングで安全資産としてドルへの現金化が世界中で行われて、ドルが急騰したんだ。そしてダウが急落するのにドルが急騰するという逆転現象が起こったんだよ
つまり今回の未曾有の事態、世界規模の異変によってパターンが変化し、「リスクオフのドル買い」となったことが、現在の「リスクオンでのドル売り」に繋がっていると考えられます。
治療薬やワクチンの開発
アメリカのバイオ医薬品メーカーである「ギリアドサイエンシズ」は、臨床試験結果を発表し、新型コロナ治療薬「レムデジビル」がコロナウィルスに感染した人たちの生存を高める可能性があることを示唆しました。これだけでもコロナ禍で暗くなってしまった世界にとっては明るい希望です。
また7月14日には、アメリカの国立衛生研究所と共同で新型コロナウィルスワクチンの開発研究をしているバイオテクノロジー企業「モデルナ」が、臨床実験結果から、第一段階で被験者全員に免疫反応が確認されたと発表しました。およそ5億回分のワクチンが2021年から開始できる見通しとのことです。これはさらに希望に満ちたニュースでした。ただし副作用も見られたようですし、今月末までの臨床実験結果が出そろわないと本当にワクチン開発が開始されるかわかりません。
どちらにせよこれらのニュースは市場にリスクオンのムードをもたらせました。この場合、安全資産として保有していたドルを売って、よりリターンが期待できる資産に投資することになります。アメリカの金利低下がその動きに拍車をかけています。それが現在堅調に推移している欧州株であり、欧州株高の影響でユーロ高にもなっていると考えられます。確かにEU圏の経済の中心であるドイツの株価は好調を維持しています。これがドル売り、ユーロ買いの背景のひとつではないでしょうか。引き続きだぶついたドルは売られるという見方もあります。
まとめ
ただひとつの要素だけで為替レートは変動されません。様々なファンダメンタルズ要素が絡み合っての結果ですから、安易に結びつけることはできませんが、コロナ禍によって、人々の生活様式の変化のように、為替相場も状況がかなり変わったのではないでしょうか。FXトレーダーもテクニカル分析で、単純に過去の相場の変動から将来を予測するのは少し難しくなっているのかもしれません。2020年後半はどのように動くのでしょうか?アメリカ大統領選挙はどうなるのか?日本の東京オリンピックは中止になるのか?今後はこの辺りのニュースも大きく影響を及ぼしそうです。
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