これまでは、「リスクオフになると日本の株を売って、日本円を買うので、円高ドル安になり、日経平均は下落する」、逆に「リスクオンになると日本円を売って、日本の株価を買うので、円安ドル高になり、日経平均は上昇する」というのがセオリーでした。
しかし、コロナ禍で市場の反応は大きく変わりました。日経平均が上昇しても、円安ドル高に転じないのです。今後の為替予測は株価の動きに惑わされないように注意していくことが重要になってくるでしょう。ここ最近の株価の動きや為替相場の動きを比較していきながら検証していきます。
2019年11月から2020年2月までの株と為替の相関
2019年11月下旬
1年前、ドル/円は1ドル108.66円、ユーロ/円は119.77円、ユーロ/ドルは1.1023ドルでした。
この時期と比較すると、2020年の11月は「明らかなドル安、ユーロ高」になっています。
このときの日経平均株価は23,112.88円、NYダウは27,875.62ドルです。
この時期と比較すると、2020年の11月は、アメリカも日本も急騰している状態ですね。
2020年2月下旬
ここではドル/円が1ドル109.78円、ユーロ/円は118.40円、ユーロ/ドルは1.0831ドルです。
11月から見るとドル高、ユーロ安という傾向が強まっています。
日経平均株価は23,687.59円、NYダウは29,398.08ドルですから、NYダウは3万ドル突破目前で、ドル/円も1ドル110円付近と互いに好調だったわけです。日経平均株価は今から比べるとまだ低い数値でした。
2020年3月の相関
2020年3月上旬
コロナ感染により市場が混乱し、リスク回避の動きが急速になった2020年3月上旬を振り替えてみます。
米ドル/円は1ドル105.28円とかなり下落。ユーロ/円は118.78円とさほど変化なく、ユーロ/ドルが1.1284ドルとかなりユーロ高になっています。
日経平均株価は20,749.75円。NYダウも25,864.78ドルと株価の急落が先に訪れた感じです。
2020年3月下旬
日経平均株価が16,552.83円。NYダウが19,179.98ドルという暴落に見舞われた中、安全な資産を求めてドル買いが盛んになり、1ドル110.82ドルまで急騰、ユーロ/円は118.52円とさほど変化なく、ユーロ/ドルは1.0695ドルまで急落。1ユーロ1ドルを割り込むかというところまで落ち込みました。
2020年6月から8月
2020年6月上旬
この時期には日経平均株価は22,863.73円、NYダウは27,110.98ドルと驚異的な戻しを実現しました。
日本株が上昇するということは円安に振れて、ドル高になるはずですが、この時点でドル/円は1ドル107.36円と下落が進んでいます。ユーロ/ドルは1.1256ドルまで一気に上昇。この辺りの時期からユーロの進撃が止まらなくなっていきます。
2020年8月上旬
ここから米ドルはかなり苦しい状態が続いていく事になります。ドル/円は1ドル105.83円、ユーロ/円が1ユーロ124.70円とかなり上昇、ユーロ/ドルは1.1779ドルと1.2ドルも目前までユーロ高が進んでいます。
日経平均は21,710.00円。NYダウは26,428.32ドルですから、株価も一時期からみるとやや低調。
2020年9月から11月
2020年9月下旬
ついにドル/円が1ドル105円を割り込み、104.57円。しかしNYダウは堅調で、27,657.42ドル。日経平均株価も23,360.30円と上がってきているのに、ドル安は続く。
2020年11月上旬
ドル/円は1ドル103.36円。明らかにこの1年間で最安値ですよね。日経平均株価は24,325.23円と堅調。NYダウも28,323.40ドルですから、もうコロナ禍以前の水準まで戻しているような状態です。
こうなると為替と株の動きはほとんど相関がなくなっていますね。というか、「リスクオンになるとドルを売ってNYダウを買う、ユーロを買うという流れ」、「リスクオフになると株を売って日本円を買うという流れ」の二本が確立していった感じで、ドルは完全に取り残されています。
ちなみに12月1週目は、日経平均株価が26,751.24円、ダウは30,218.26円と今年最高値を記録し、絶好調です。ユーロも、ユーロ/ドルは1.2121ドルですから、かなり厳しいと思われていた1.2ドルをブレイクしています。米ドルの完敗という状態です。
まとめ
為替へ影響力を与えるのは、金利や景気といったファンダメンタルズ要素や、地政学リスクなど様々ありますから株価は為替レートを占う要素のひとつに過ぎないのですが、やはり株価の動向は気になります。株価バブルの状況が落ち着くまでは、今までのセオリーはまったく通用しない感じですね。
雰囲気的にはリスクオフの流れで、安全なドル買いに流れるような展開だと、米ドルの上昇は期待できるのかもしれません。追加財政の法案が議会の承認を得て、さらにリスクオンの傾向が強まっても、この状況だと米ドルにとっては追い風になりそうです。
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